島村楽器テクニカルアカデミー 公式ブログ

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管楽器リペア技術録No.1~テナーサックス③~

こんにちは。
さて、今回は管楽器リペア技術録のテナーサックス編最終回をお届けします!

前回見て頂いた様にベルローラーやベルアイロンを使って修正をしていくと下の写真の様に修正完了です。
塗装された楽器の場合、凹みの修正した痕が白く残ってしまうのをご存知ですか?
恐らく楽器店では、どうして白くなるのか?
どうして跡が残るのか?ということは教えてもらえません・・・と思います。

下の修正終了の写真も、丸で囲まれた部分は白くなっていると思います。

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丸で囲まれたうっすら白い帯状の跡が修正した部分です。

管楽器に用いられる塗装は主に『焼き付け塗装』といってギターやバイオリンの塗装と違って熱で硬く薄くしています。
その為、凹みで金属板と塗装が折れ曲がると塗装膜は硬く伸びないので塗装に『細かいヒビ』がたくさん入ります。

簡単に言うと、下敷きなどの透明なプラスチック板を折り曲げると白くなるのと同じ現象なのです。
なのでどうしても痕が残ってしまいます。
古い楽器の場合や塗装が元々弱いメーカーの場合は塗装が剥がれてしまう事も少なくありません。

では、銀メッキは?という質問が来そうなので。
銀メッキの場合は銀という金属自体が柔らかくある程度伸びる性質を持っているので、最終的に色々細かい加工はしますが、塗装の痕は残りません。(とはいっても限界はあります)

さて、修理に戻りましょう。
今回はお客様からは依頼がありませんでしたが、
ついでに譜面台や机にぶつけた時に出来るこの凹みも一緒に修正しました。

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写真の〇で囲んだ部分は、ベルの淵にあるカーリングが邪魔をするちょっと曲者的な凹みです。
これも前回で使用した工具と同様の工具類を使用して修正していきます。

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修正が終わると、この様に修正されます。
これで『凹み修正』に関してはほぼ終了です。

次に、凹み修正の為に外した部品類を元通りに溶接していきます。
特別工具は無いのでここは創意工夫で、最もベストな位置に部品を取り付けていきます。

ここは半田付けという溶接です。
一般的に元々あった取り付け跡を目安にしますが、凹みを修正したことで金属は微妙に伸びているので微調整は細かく行います。

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ここで注意することは、あくまで溶接後の部品の位置や機能を最優先すること。
そして、溶接時間を少しでも短くして塗装にかかる負担を少なくすることです。
管楽器の半田付けは主にガストーチ(ガスバーナ)を使用しますが、
作業時間が長くなれば長くなるほど塗装は焦げて無くなり、見た目にも音にも大きな影響を出します。

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今回は塗装への影響を最小限にすることが出来ました。

さて次はトーンホールの修正です。
凹みによって歪んだトーンホールの頂点を平らにする作業です。
色々な工具がありますが、今回は便利な海外製の工具を使用しました。

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これで、凹みに関わる全ての作業が終了ですが、締めに行う作業がこちら!
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管体の洗浄です。

表面には溶接を行った際の薬品や、凹み修正の作業中に着いた手汗(笑)なども沢山付きました。
管体の中は凹みを修正する際に使った金型に塗っておいたグリスが付いているので、これをクリーニングします。

もちろん、通常の作業の一環としての汚れもこの際にしっかり落として綺麗な管体にします。
今はなかなか時間が無いということで、管体のクリーニングはしなくて良いと仰るお客様もいらっしゃいますが、管体の汚れ(油やほこり)はタンポの劣化を早めたり、キイの動きに異常をきたしたり、最悪な場合は塗装が剥がれる原因になってしまうこともあります。

とはいえ、サックスなどの様に管体にたくさんの部品が付いている楽器は簡単に洗浄できません。
代官山音楽院で授業を受けている学生は当然部品を全て外して洗浄が行える様に訓練しています。

もし、部品を全て外した管体を見たい!!
自分で分解の体験をしてみたい!!
と思われたら、ぜひオープンキャンパスにご参加下さい♪

さぁ、次回からは新章(旋盤技術!!!)突入です。
乞うご期待!