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島村楽器テクニカルアカデミー 公式ブログ

音楽技術専門の学校『島村楽器テクニカルアカデミー』の公式ブログ!音楽の職業・仕事を探す人は必見!

管楽器リペア技術録No.1~テナーサックス②~

こんにちは!
先月から始まった「管楽器リペア技術録」の続編をお送り致します♪

前回紹介した楽器は転倒によって発生した事故楽器です。
一般的にはスタンドに立てておいてスタンドごと倒れる…。
ストラップで吊っていて外れて落下…。
ケースの蓋をロックせずに持ち上げて楽器だけ床に…。
という考えるだけでもゾッとする光景ですが、その結果が前回の様に管体の曲りに繋がります。

ここまででも自分では味わいたくない事故ですが、
実は前述のような事故が起きると、必ず発生する破損がベルヘコと呼ばれるベルの歪みです。
中でも、最も一般的で見た目にも悲しくなるのが、これ。

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矢印の部分が、見事に折れ曲がっています。

金管楽器をはじめとした金属製のベルを持つ楽器の凹みで最も目立つ歪みです。
更にサックスの場合、ベルの形状がトランペットなどと違い、ベルの『R(曲線)』が一定ではないので基準が出にくく修理は難しいです。

さて、今回この歪みを修正するのに使用するのは、この3つの工具です。

ベルローラー

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先端が回転する様になっていて、山折れになっている部分を潰しながら曲面を出してきます。
このベルローラーはローラー部分が短くてサックスのベルを修正するのに適しています。
この他にも下の写真の様に、ローラーが長いものもあります。
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修理する対象に合わせて様々な工具から最も適したものを選ぶ。これも経験と技術ですね。

ベルアイロン

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このベルアイロンと呼ばれる金型の上にベルを置いて、次に紹介するハンドローラーで慣らします。
時にはハンマーを使用して板金を行う事もあります。

ハンドローラー

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一番小さくて、最も使い方が難しい(私が思うにです)奥の深い工具です。
以外に価格も高いです。

基本的にはこの3つの工具を上手く組み合わせて修正していきます。


今回の楽器で紹介すると、
最初にベルのカーリング部分を水平に戻します。
これは定盤と呼ばれる水平をチェックする台を使用する事もありますが、楽器の場合は目で水平を判断していく事も多くあります。
続いて、ベルローラーを使って折れ曲がって出来た折れ目の山を丸く曲線に修正します。
この作業は力加減がものすごくシビアです。

前回、ネックジョイント側の修正時に全ての部品(キイ)を外さないと書きましたが、
実はその理由はここの作業を行う際に必要な要素なのです。
一般的には部品が付いていない方が、軽いし持ちやすいのですが、
修正する際には楽器自体の重さがあった方が、力まず作業が出来る場合もあります。
(修理する技術者によって感じ方は違うと思います)
今回はその典型的な例でした。

ベルローラーで修正した後は、修正した部分としていない部分をなじませる為にアイロンの上でハンドローラーを使用し、境目を無くすように慣らしていきます。
これも、力任せに作業すると修正痕は大きくなるばかりで綺麗にならないので色々コツがあります。
これは経験でしか得る事の出来ない技術です。多くの作業を行う事でしか習得できない技術です。
もちろん、この修正作業を行う為には、工具自体や工具を取り付ける万力といった設備が必要となります。
例えば技術学校でこのような凹み修正の勉強をする為には写真の様な万力がそれなりに必要になります。
また、自分の手で実際に叩いたり曲げたりして、凹み修正の感覚を養う必要があります。

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金属製の管体を持つ楽器の修理で最も技術と経験が必要な凹み修正、いわゆる板金をご覧頂きました。
代官山音楽院では、感覚が物をいう板金の授業も理論的に資料を基に指導を行っています。
また、管楽器工場と提携し実際の楽器のベルを実習用に加工してもらい実習を行っています。

金管楽器の凹み修正など管楽器の修理に興味がある人は是非オープンキャンパス授業見学にお越し下さい。

さて、次回は管楽器リペア技術録No.1~テナーサックス~の最終回!
配信は2月末頃を予定しております。お楽しみに♪

管楽器リペア技術録No.1~テナーサックス①~はこちら

管楽器リペア技術録No.1~テナーサックス①~ - 代官山音楽院 公式ブログ「DMAの日常」