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島村楽器テクニカルアカデミー 公式ブログ

音楽技術専門の学校『島村楽器テクニカルアカデミー』の公式ブログ!音楽の職業・仕事を探す人は必見!

ギター解体深書 ~ギターに関するetc. vol.1 「ナット交換」

ギター解体深書 ギタークラフト&リペア科

皆さん、こんにちは。

 今回の解体深書は予告どおり、新シリーズ「リペアに関するetc.」の第一弾として、「ナット交換/リナット」をご紹介します。
今回担当してくれたのは島村楽器のリペア工房で技術者として活躍、ギタークラフト&リペア科講師の鵜飼先生が担当してくださいました。
それではどうぞ!

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・ナットの基礎知識

 ナットは小さなパーツですが、弦が直接乗っているとても重要なパーツの一つです。このナットの出来次第でプレイアビリティ、サウンドやチューニングの安定度などに大きな影響を与えます。更には加工性の違いもあり、実際に交換を作業する場合は硬さの違いも考慮しなければいけません。

 そんなナットに使われる素材は様々で、一般的なものでは「牛骨」、「プラスティック」、「金属」、「カーボン」など各社が趣向を凝らしたものを販売しています。この素材によっても音質やチューニングの安定度に差がある為、不具合による交換だけでなく、自分の演奏スタイルや好みの音を目指して交換する場合もあります。


・ナット交換

それでは交換作業を見ていきましょう。
今回の患者は、モーリスのアコースティックギターです。

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まずは状態を確認していきます。
この状態確認は非常に大事で、不具合がどんな原因で起きているのかを把握し、本当にナットが原因なのか、ナットが原因なら交換が必要なのか、などを見ていきます。

・・・が、今回の場合は、ご覧の通り割れています。交換以外の手はありません。

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まずは、割れたナットを外します。塗膜が割れないように気を付けながら慎重に取り外します。ナットは基本的に消耗品で交換パーツなので、普通はある程度取り外しが容易なように取り付けてありますが、稀にものすごくがっちり取り付いていて外すのに苦労することがあります。

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ナットを外した後は刃物を使いボンドなどを取り除き、溝を綺麗にしていきます。当然ながら指板やネックを削らないように気を付けながら、しっかりと平面を出します。ここもべったりとボンドが付いていたりすると苦労するところです。

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続いて交換用ナットを用意します。
元々プラスティックでしたが、今回はグレードアップし「牛骨」を使用します。
厚みや幅をヤスリで削りながら、ネックぴったりに作ります。サイズを合わせたら、ずれない様に接着です。

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接着が出来たら、弦溝を切っていきます。
慎重に弦ピッチを罫書き、専用のヤスリで削りますが、この作業はとても重要で、弦溝の深さや太さの違う各弦の弦溝の形などに注意しながら慎重かつ手早く進めます。深さは浅すぎても深すぎてもNGで絶妙の位置に合わせます。弦溝の形は更に重要で、幅だけでなく角度なども注意が必要です。

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弦溝が出来たら形状の仕上げです。上面の高さを揃え、角を丸め、最終的にコンパウンドで磨きピカピカにします。
ナット自体は以上で完成ですが、ギターはバランスが大事! 最後はネックの反りや弦高などをチェックして終了です。

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いかがでしたでしょうか?

こうしてみると簡単にやっているように見えるかもしれませんが、実際にはとても繊細で難しい作業です。始めにも書きましたが、このナット一つでギターの良し悪しが大きく変わってしまうことも多いです。学校では1年次の早い時期にこのナット交換の授業を行い、学生が繰り返し練習していけるようにしています。数をこなして精度とスピードを上げていくのです。

 今回はナット交換をお送りしましたが、「リペアに関するetc.」では、今後もクラフトやリペアに関するいろいろなことを紹介したいと思います。お楽しみに!


ギタークラフト&リペア科:ギター製作&リペア技術を修得 | 代官山音楽院