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島村楽器テクニカルアカデミー 公式ブログ

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ギター解体深書 〜ギターのメンテナンスと調整vol.3

ギタークラフト&リペア科 ギター解体深書

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最後の決め手、調整/セットアップ「前編」

 さて、Vol.1はギターの保管。Vol.2はギターのクリーニングについての話でしたが、シリーズ最終テーマ、第三回は「ギターの調整/セットアップ」について書かせていただきます。
 ギターという楽器は生き物ですので、日々状態が変化していきます。毎日弾いていると気づかなくても、ふとした時に「なんか弾きづらいなぁ」と思うことがあると思います。そんなときにこの「調整」をすることで元の弾き心地に取り戻せる、あるいは以前より弾き易くなるといった効果が表れます。更には弾き心地だけでなくサウンドの変化もありますので、積極的なサウンドメイキングにも一役買います。

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 ここでは「自分で出来る調整」ということで4つのポイントを見ていきましょう。

 尚、今回紹介する調整はいずれも元に戻せる調整ですが、自信の無い方は無理に作業せずにリペアショップ等に持ち込む様にしましょう。特に調整に使うレンチやドライバーは適したものを使用しないと破損や不具合の原因になる場合がありますのでご注意ください。最後はプロの技術者に任せたほうが確実です。

トラスロッドの調整

 ネックにはギターで40~50kg、ベースで70~80kgの弦の張力が掛かっていて、この力によってネックが沿ってしまいます。また、弦の張力だけでなく湿度や気温の変化に反応し動いてしまうことがあります。そういった“反り”に対応する為、現在のギターには「ネックの中にトラスロッドを仕込む」ことが一般的になっています。トラスロッドとはある種の補強のことで、その昔は木の棒が埋まっているだけでした。現在のソリッドボディのギターには金属製の棒が埋まっており、その一端にネジが切られていて、そこにナットが取り付けられています。そのナットを回すことでネック自体に力を掛け、ネックの反りを矯正します。

 ネックの反りには様々な形があり、順反り・逆反りといった単純なものから、ネックが波打ったり、ねじれる方向に反ってしまったもの、それらが複合的に起きてしまっているものなど様々です。
 今回の調整は単純な順反り・逆反りに対する調整法についての話になります。それ以外の調整はやはりリペアの範疇になりますのでプロに任せましょう。

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弦の張力に対して順方向なので“順反り”、張力に対して逆方向にネックが反るので“逆反り”と言います。


まず、現状の確認です。
 ギターのチューニングを合わせて、弾く姿勢に構え6弦の1フレットと最終フレット(ボルトオンのネックの場合)をそれぞれ左手・右手で押さえます。その時押さえた弦の中心当たり(7~9フレット近辺)の弦とフレットの隙間を確認します。

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セットネック、スルーネックの場合は、最終フレットではなくボディとのジョイントフレットを押さえて確認します。

 隙間が無いときは“逆反り”と言い、ローポジションでビビリや詰まりが発生しやすくなっているはずです。隙間がありすぎるときは“順反り”と言い、ネックの中心付近からハイポジションにかけてのフレットで問題が出やすくなります。1弦でも同じように確認し、ネックの左右で同じような反り方をしていればトラスロッドを回して調整します。

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隙間は、慣れないと判りづらいですが感覚で覚えていきます。

 ロッドの調整口はギターによって違いますが、ヘッド側・ネックエンド側のどちらかにあります。どちらにある場合でも回したときの効果は同じで、ネジを締める方向(右方向)に回すとネックは逆反り方向に動き、ネジを緩める方向(左方向)に回すとネックは順反り方向に動きます。いずれの場合でもネジを締め切っている、あるいは緩め切っていると効果が出ませんので注意してください。特に締め切っているのに無理に回すと最悪の場合ロッドが折れてしまい大掛かりなリペアになります。

 ネジは一回に1/8回転程度を目安に回し、動かしたらチューニングを合わせて再度確認します。どのくらいに合わせるかはギターによって違ってきますが、基本は確認したときに弦とフレットの隙間がハガキ一枚程度の厚み(0.3~0.5mm)になるように調整します。ネックは真っ直ぐではなく少し順反りさせるということです。

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フェンダー系のヘッド側は六角レンチを使用することが多いです。

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ギブソン系の調整は“パイプレンチ”を使用します。

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ネックエンドに調整口がある場合はネックを一度外さなければいけません。

弦高調整

トラスロッドを適正な状態に調整したら次は弦高を確認してみましょう。弦高の確認は12フレット上でおこない、フレットの上面から弦の底面までの距離を測ります。計測にはスケール(定規・直尺)を使い、視線の傾きに注意しながら、ボディに平行に見るようにします。このときもチューニングは合わせて、ギターを弾く姿勢で確認します。

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スケールは弦に対して平行に、視線は指板面に対して水平に見ます。

 調整方法はギターに搭載されたブリッジによって様々ですが、大きく分けると“サドル毎に各弦で調整可能”、“ブリッジ自体の傾きで調整”の2つに分かれます。

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六角レンチはサイズが合っているものを使用しないとネジが“なめて”しまいますのでご注意を。

 各弦で調整可能なものの代表としては、フェンダー社の“シンクロナイズド・トレモロ・ブリッジ”があります。これは6つに分かれたサドル毎にイモネジ(小さなネジ)が2つ付いていて、そのイモネジを回して出し入れすることでサドルの高さを変えて弦高を上下させていくというものです。

 一方のブリッジの傾きで調整するタイプの代表格は、ギブソン社のレスポール・モデルでおなじみの“チューン・オー・マティック”です。これはサドル毎には弦高調整の機能が無く、ブリッジの両端で支えてるネジを回すことでブリッジ自体の傾きを変えて弦高を調整していきます。

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イモネジには六角レンチだけでなく、マイナスドライバーで回すものもあります。

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フロイドローズは支えているスタッドを上下させることで調整します。

 では、どのくらいの高さにすべきなのかということですが、これは完全に好みの問題と言えると思います。注意点としては弾きやすいからと言って下げすぎるとフレットで音がビビリやすくなることがあるという点です。下げたときは全弦・全フレットできちんと音が出るか確認をして下さい。また、単純な高さだけでなく各弦のバランスも重要です。

 更に演奏性の面だけでなくサウンドにも大きな影響を与えますので様々な弦高を試してチェックしてみて下さい。尚、サドルを動かす際は必ずチューニングを緩めるようにしましょう。サドルに力が掛かっている状態で無理に動かそうとするとネジ山が潰れてしまうといったトラブルの原因につながります。
 さて調整についてここまでお送りしましたが、まだ終わりではありません。残りは次回「調整/セットアップ「後編」にてお伝えします。お楽しみに!


ギター解体深書 〜ギターのメンテナンスと調整vol.1〜 - 代官山音楽院 公式ブログ「DMAの日常」


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